人魚・終 〜開放〜 【小説】/北村 守通
強すぎることなく頬に心地よかった。小康状態にあった。蝋燭の火は相変わらず煌々としていたが、気持ちばかりそれは以前よりも弱々しかった。しかし、やはり風がどのように吹こうとも、決して消えることはなかった。
決断を実行に移すに当たって、私はもう一度この海辺を見渡し確認した。服はもうすっかり乾いていたので、自分が望む以上に落ち着いて行動をとることができた。勿論、先ほどと同じ過ちを犯さないために、波打ち際との距離を充分にとっておくことも忘れはしなかった。震えている彼女に勇気を与えようとでも思い上がっていたのであろうか、私は彼女の方に向き直ると、ごく自然に笑って見せた。彼女は首を横に振った。そしてうつむい
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