人魚・終 〜開放〜 【小説】/北村 守通
が、そしてこれから成そうとすることは、彼女を失うことになるであろう結末が想定されたが、彼女がこれまで味わってきたであろう鎖の重さが、全てにおいて優先された。失くすとわかっているのならば、持つべきではなかった。
「でも、それも今日で終わりです。」
私は蝋燭を再び手に取った。この弔われることなき光の行き着く先は、別のところにあるはずだった。彼女はこれから何が起こるのか解らない様子で、蝋燭の方を見つめるしかないでいた。私は彼女の手をとり、黙って提案した。私の手は密かに震えていたが、彼女の手はそれ以上に震えていた。そして私のものよりも温かく、やわらかい様に感じられた。
風は以前よりは弱まり、強す
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