人魚・終 〜開放〜 【小説】/北村 守通
は、まだしばらく空を見上げていた。今度は私の番だった。
「火は何故消えないのでしょう?」
「灯してはいけなかったのです。いえ、灯される可能性があるのならば、最初から作るべきではなかったのです。」
やはり天を見上げたまま、彼女は答えた。
「たぶん」
蝋燭に目をやりながら考えた。
「許してくれる人がいなかったのでしょう。そんな蝋燭を作ってしまった彼女のことを。一人で苦しみ、一人で胸を掻き毟られていたのでしょうね。誰に許しを乞えるでもなく。自分自身を苦しめるために、自分自身に重い、重い鎖を巻きつけていたのですよ。」
私は静かにゆっくりと決意を固めていた。確証もなければ確信すらなかったが、
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