人魚・終 〜開放〜   【小説】/北村 守通
 
が込められており、海にまつわる幾多の人々を救い、やがてこれが評判になる。しかし、一方で優しかったはずの老夫婦は、痩せ衰える娘の想いをよそに強欲に走り、人魚の失望をかってしまう。老夫婦のもとを去る前に人魚は、赤い、血の様に真っ赤な蝋燭を作る。そして、決してこれらは売らないように、火を灯さないように、と遺して去るのだが、強欲になってしまった老夫婦は、やはりそれらもこれまでと同じ様に売りに出してしまう。
 これが災いを呼び込む蝋燭とは気づかずに。
 赤い蝋燭が灯された日には、海に災いが呼び込まれる。老夫婦は村を追い出されることとなった。

 確かこの様な内容だったと思う。全てを語り終えた彼女は、
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