人魚・3 〜対話〜 【小説】/北村 守通
ということを見つけるために考えていただけなのかしら。今となっては何に対する答えを得ようとして考えていたかも忘れてしまいましたわ。」
逆流する血液を抑えながら、私は言葉を捜した。見つからないまま私は、その横顔から目が離せないでいた。
「嵐が来るの。これが灯された夜は。」
幾度か、この頬の上を滴が流れていったのであろうか。それはやはり私の知り得る範囲外の世界であったが、それでも私は果て尽くし、もはや流すもののないように思える彼女の瞳を想わずにはいられなかった。
「こいつは」
私が放つべき言葉が、今やっと見つかった。
「確かに海の中にありました。そして海中にあって火を灯していた。
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