人魚・3 〜対話〜   【小説】/北村 守通
 
のことを思い出した。そしてそのことを彼女に打ち明け、決してあなたの時間について干渉するつもりはなかったのですけれども、と弁明した。幸運なことに彼女の許しを得ることができた。ただ、彼女の瞳が再び光を失った様に思えた。
「あのとき」
蝋燭の方に目をやりながら、彼女は話を進めた。それはたぶん、私が先ほどまで解明させたいと考えていた謎についての解答に関することと思われた。私も一緒に蝋燭の方に目をやった。もうあれから充分な時間が経過している筈なのに、それは決して時間が経過していない様に見えた。
「私も考え事をしていたの。でも、結局答えが見つかるわけでもなかったけれど。もしかしたら、ただ答えが無い、とい
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