人魚・3 〜対話〜 【小説】/北村 守通
とを勧めた。私は、得体の知れない異性と一夜を共にするなど危険ではないか、と進言したが彼女は、あなたはきっとその様な行為は行わないだろう、と笑って答えた。それが私のはじめて見る彼女の笑顔だったということに、少しして気がついた。私は心から素直に礼を言った。
「こちらの方はよくいらっしゃるの?」
「どうにも寝付けない夜は、散歩がてらに時間をつぶしてます。」
「お一人で?」
「考え事だけしか考えつかないときには一人に限ります。」
「あら!」
少し意地悪そうな顔をこしらえてみせてから、彼女は続けた。
「そうしたら、今日はお邪魔だったかしら?」
私はお返しに笑ってみせ、その間に先日の夜のこ
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