人魚・3 〜対話〜   【小説】/北村 守通
 
けた。
「去年で閉めたんですけど、まだ買い手もつかなくて。」
 割り切れない想いもあって、今でも時々掃除だとか、手入れだとかに来てしまうのだ、と彼女は言った。ありきたりの海岸で、ありきたりの名前の周辺施設の顛末だった。私はごくありきたりに同情し、ごくありきたりのねぎらいの言葉を掛けた。それ以上の言葉は思いつかなかったし、仮に思いついたとしても結局はそれは嘘になってしまっただろうということがわかっていた。

 窓ガラスの向こうで風が啼いた。
 雨は何時来るのだろうか。
 雷も来るのだろうか。

 二人とも外の様子は気になったが、決して外に出て状況を確認しようだ等という馬鹿げた考えには
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