人魚・1 〜接点〜   【小説】/北村 守通
 
ほうを振り向くことはないように思われた。
 同じ様に私も背を向けることにした。砂がからかうように足にまとわりつき、行く手を阻んだが、もはやそれすら気にならなかった。侮辱や屈辱といった輩にはもう慣れっこになっている。歯向かってみたところでどうなるというものでもないのだ。どうあがいたところで自分が惨めになるのにかわりはない。ただ、惨めさの題目が変わるだけだ。それは本質的に何も変わらないということが、わかり過ぎるほどわかっていた。平凡な一日の幕引きを感じつつ、私は明日の朝と昼とのことを考えた。しかし、今日と別に変わりがないであろうことを思い出し、考えることを止めることにした。頭の中が鳴り響き、胃は凍み
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