人魚・1 〜接点〜 【小説】/北村 守通
凍みわたり始めていた。浜辺の宴はまだ続いていたが、火の勢いはもはやピークを過ぎたように思われた。今、酔いしれている彼等は、もう少しすれば自分自身のちっぽけさを目の当たりにし、空しさに胸を掻き毟られるのだろう。丁度酔いが冷めるにしたがって身体中の熱を奪われてゆき、骨の節々のいたるところで痛みを感じるように。あるいはまた、二日酔いの朝に夢と現実との転換の間でどうしてよいかわからずにもがき、苦しむように。そして彼等は繰り返す。明日のための希望を持つが故に今日に絶望し、今日の絶望から立ち直る勇気の為に明日に希望を持つことを。
彼等のことを想うと、切なく悲しかった。
絶望の鎖を断ち切るために希望を切り捨てた自分自身がいつものように空しかった。
指先がいつものように震え始めた。
もう、おやすみの時間だったのだ。
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