人魚・1 〜接点〜 【小説】/北村 守通
の向こうでは火が焚かれていた。その燃え盛る音に混じって、聴くに堪えないこれまた最悪の歌声が聞こえていた。彼女の連れかとも思ったが、一見してそうでないように思われた。いや、それもただの願望だったのかもしれない。むしろ、何の理由も無く、もしくは私が受け入れられるよりも重くのしかかった理由で海の中にたたずんでいるよりも、どこにでもあるように、たまたま仲間達からほんの一時だけ距離をおいている、ただそれだけのほうがよっぽど良いことなのだということは、わかりきったことであった。私には権利はなかったのである。私は自分自身に諦めるためにもう一度彼女の方を振り返った。彼女は相変わらず海の中に居た。そしてこちらのほう
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