人魚・1 〜接点〜   【小説】/北村 守通
 
をとるものではない。ましてや、だからといって彼女の時間を砕く権利など私には無かった筈なのである。しかし、彼女にはまだ、私を無視し自分の時間を守る権利が当然の如く成立していたので、私はその権利の行使を密かに期待した。そして失敗した。

 「いいえ、どうか気になさらないでください。」

一瞬、波につられて力なく踊る彼女のスカートの端が魚の鰭か何かのように見えたが、それは大した問題ではなかった。私はいつものように自分を恥じ、そして飽きない程度に後悔した。後悔とは毎度後から思うことなのだと、そのとき理解した。
 潮もそろそろ引き際にあった。私もそうだと思った。

 最悪の気分だった。浜辺の向
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