人魚・1 〜接点〜 【小説】/北村 守通
、見てくれは透き通って輝きに満ち溢れているがその実、掻き毟られた砂によって濁っているものなのだ。だからこそ、海というのは冬でも温かい。全ては何らかの犠牲があって成り立っているのであり、それを知るものは次の新たなる生贄の証なのであった。
そして彼女は海の冷たさを知っているように思えた。
私には確証はなかったが、確信はあった。
「どうかなさいましたか?」
まだ禁じられていた言葉を放ってしまった後、私は後悔した。私には確信はありこそすれ、確証はまだなかったのだ。確信がただの思い過ごしであったことはこれまで何度も経験してきたことであった。だからこそ、確証をつかむまでは不用意な行動をと
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