人魚・1 〜接点〜   【小説】/北村 守通
 
する。こうして敬虔なる者は、いつの世においても格好の生贄となってきた。かつて、ギリシャ神話の時代、一人のケンタウルスは不死の肉体を持つが故に、死ぬまで解けぬ神の呪いの毒矢に苦しめられた。ケンタウルスの苦しみを知らぬ人々にとっては、不死の肉体を持つことこそが夢なのである。これは私には到底共感できない夢であり、価値の判断基準であった。
 私は天を仰いだが、天は私を見放していた。私はいつものように諦めて、消波ブロックに腰掛けた。海は穏やかに波打ち、砂を引っ掻き続けていた。いい加減、残酷なものには見飽きていたので、私はふと砂浜のほうに目をやった。

 そこに彼女が立っていた。
 月も星も
 そし
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