歳ととることについて考えさせてくれる詩集 壷坂輝代『探り箸』/イダヅカマコト
 
がありません。
 もちろん、大人になった壷坂さんにお母様の乳房は物として必要ないのです。しかし、実際に切るという行為によって、壷坂さんの中で彼女の「母」に対する想いが、物から精神的なものにさらにうつりかわったように見えます。
だからこそ、声を出した「母」に向けられる「いのちがほどかれたように」という言葉の中に、壷坂さんの実感が込められていると感じられる。そういう詩です。
「母」と同じ病にかかりうる壷坂さんは、同じ病にかかられたときどうされるのか、私は気になってしかたがりません。

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