透明宣言/あおば
 
っくりと立ちのぼるぼんやりとした色に煙る新規契約のお客様に迎合するかのように少しだけ卑屈な口元に笑みをたたえた昼下がり
ATM機の順番を大人しく待つ小市民の短い行列を横切って歩道橋に上り
とぎれがちのファミリーセダンのゆるやかな屋根の曲線に
やわらかい冬の日差しが鈍く反射して
エアコンの不在と
真空管式のレトロなカーラジオを探し回る青年たちの
不透明な時代感覚をせせら笑うかのように
1960年式のトランジスタラジオが
スイッチオンで伝える天気予報の前の株価状況
ノロノロと運転しながら振込詐欺の音声に怯え
長々と続いた首都高速の曲がりくねった渋滞に耐え続けた鉄筋コンクリートの補強
[次のページ]
戻る   Point(7)