クロスレット・シルバー  /いすず
 
た。


次の日、千尋が手に入った油をわずかのお金に代えてもらっていると、少女がやってきて、だまって傍に立った。
「坊、しばらく見んうちに色気づいたな。かのじょか」
おじいが髪をくしゃくしゃにしてなでた。
「そんなじゃないって」
油をわたすと、懐にわずかの重みが出来た。
いこうか、と眼でうながし、きのうの川べりへ出た。少女が、手にくるんだピーナツをもって、紙ごとお墓にお供えをした。
きれいな髪だった。背中までながれる黒の髪、耳の横でふたつ、濃いピンクのリボンを結わえている。うつむく首筋は白くて、おどろくほど細かった。
「この子はなんていうの?」
「ジョゼフィン」
「魂が、ち
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