クロスレット・シルバー /いすず
うさとされていた。そんな父がなくなってその冬の、クリスマス間近のとある土曜の午後、いつものように公園でおじいたちにがらくたを配り歩きながら、つかれた足を路傍の石で休めて一息入れていたときのことだった。
ビスクドールのように可愛らしい眼をした少女が、ひとりでベンチに腰掛けている。その眼は泣き腫らしたように紅かった。ないたまま、前を見据えてなみだをふこうともせず微動だにしないので、千尋は生きているのかと一瞬疑ったが、かのじょはしばらくしてわずかに、一、二度瞬きをした。
家出かもしれないし、けんかかもしれないけど、それにしてはいい服を着ているし、取り乱しているようでもないから、少しの間考えたあと
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