クロスレット・シルバー /いすず
いでマグカップに満たし、スティックシュガーを添えてカウンターのふたりの前にならべた。
羽鳥はカウンターのちいさなミニツリーのインテリアを気に入ったらしく、ひとりで撫でていた。心が休まるんだろうな、と千尋は見ていた。
だまって、湯気の立つ厨房の傍で無理に声をかけようとしずに、千尋は羽鳥を見守っていた。おない歳くらいの羽鳥は、かわいいものやいたいけなものに触れては語りかけるようなしぐさでときおりながめ、なにかをいいたそうにしては唇をとざすのだった。美雪はそのしぐさを知ってか知らずか無関心なように気付くそぶりさえ見せず、終始俯いている。微妙な温度差を千尋は感じるのだった。
「ごちそうさまでした。こ
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