クロスレット・シルバー /いすず
。これ、すくないですけど」
千尋はその日のありったけの稼ぎを出して、美雪にわたした。
「いいのに。律儀なのね」
美雪は、出て行く千尋を見送りながら、呟くように言った。
「ねえ、千尋は神様を信じる?」
千尋はつよく頷き、扉をかたんと締めて出て行った。
イヴが訪れた。銀世界にはほど遠くても、今年はうっすらと雪化粧するくらいの、粉雪が降り積もった。千尋のリヤカーも、サンタのそりにみえなくもない。
おじいのところに寄った。おじいは寝ていた。
「おう、坊」
弱気な声で、千尋を見る。
そのまま、ごつごつした大きな大きな手で、千尋のほおをなでさする。
「おまえの未来はこれからだの。こん
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)