クロスレット・シルバー  /いすず
 
いから」

カフェ・オルフェは街外れの一角にあった。赤茶けた煉瓦の、ツタのあちこちに絡まった格子窓をはめた造りの喫茶店である。内装はきれいで、暖炉があたたかに燃えていた。羽鳥が手を翳しながら、待っていた。
「ここ、きみのおうち?」
「おじの家なの」
美雪が言った。
臙脂色のエプロンをしながら、美雪が立って行った。「羽鳥、なんにする?」
千尋はメニューを手に持って、羽鳥の前に差し出した。
細いひとさしゆびで、羽鳥がゆびさす。
「カフェオレです」
「きみはなんにする?」
「おなじもので」
「わたしがおごるわ」
美雪がお店のなかにはいって、あたためたミルクをエスプレッソに次いで
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