魚の声/ブライアン
れてしまうのではないか、と恐れた。身の丈ほどある草を押し分けて自転車の置いた場所まで無言で歩いた。何か言おうとしたが、何を言っても無駄なように感じた。その声は魚の声ではないのだから。それでも、謝ろうと肩に手をかける。振り返る同級生の顔は不思議そうだった。どうしたの、といつもと変わらない声で言った。魚は、本当に鳴くの、と尋ねた。魚なんか鳴かないよ、と同級生は答えた。自転車に跨って、砂利道を走っていた。自転車の光が、漕ぐスピードによって強まったり弱まったりしている。遠くから聞こえてきた車の音が見える。大きな橋には車のテールランプが連なっていた。
鶴見川の水面に一匹の鯉が跳ねる。沈みつつある太陽
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