魚の声/ブライアン
太陽の光が鯉の鱗に反射する。老人が一人、堤防の上で立ち止まっていた。彼は夕日を見に来たわけではない。夕日を見る振りをして、魚が鳴くのを聞きに来たのだろう。毎日老人は日が沈む時間帯に、魚の鳴く声を聞きにやってくるのだ。魚の声に耳を澄ます。微動だりせずに。
鴨池大橋の向こうに太陽が沈む。完全に日が沈むと、老人は家に向かって歩き始める。魚なんか鳴かない、と老人は思うだろう。それでも次の日にはまた、魚の声を聞きに来るだろう。
魚なんか鳴かない、と言った同級生の顔が浮かんだ。いまだ、魚の鳴く声を聞いたことは確かにない。
戻る 編 削 Point(1)