「冬のある日」 (リレー小説・三題噺)/佐藤犀星
いた。いや、違う。あれはそう……まるでこれから戦争でもするような……。
「司令、捕虜が何か申しております」
「ほうっておけ。翻訳機は中尉に持たせたものだけだ。彼はよくやってくれたが……今や、我らがあのような辺境に割ける人員も資材も限られておる」
黙りこむと、すべての手足を拘束された俺を、まるで汚いものでも見るように一瞥した。なぜかそれがわかった。
「覇者たる我らを知らず、いや、ろくに星々に手も届かぬ、このような害虫もどきの風体では、な」
「 はっ。まさしく害虫。小官の故郷では悪徳高利貸しよりも忌み嫌われておりました!」
「そうだろうな。この外貌とあっては、此度の出征に異を唱える者
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