君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
らいの男の子が、好きな女の子にあんな風に嫌がることをする心理は、今の私にはなんとなくわかる。照れくさくて、素直に近づけなくて。それでも、構っていてほしいから、見ていてほしいから。あんな逆説的な行為に至る。
 あの頃の私にはわからなくても、今の私にはわかる。そういうことは少しずつ増えてきた。だけど少なくとも、その女の子に君の気持ちの真意がわかるのはまだまだ先の話。そして、それに君が気付くのも。
取り合いを続ける二人の傍に、気付かれないようにそっと近づき、男の子の後ろに回る。
私の腰ほどまでしかない男の子が目一杯に伸ばした腕は、ちょうど私の目の前で、腕の付け根がわずかに綻んだぬいぐるみをぶらつか
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