君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
しい二人組が前方に見えてきた。
「私のぬいぐるみ返してよ!」
「だからほら、返してるじゃないか。早くとれよ」
 パジャマに身を包んだ小さな男の子と女の子が、何やら言い争いをしている。
 男の子が差し出したクマのぬいぐるみに、女の子が手を触れる直前で、素早くそれを頭上に掲げる。女の子はそれには届かない。何度も飛び跳ねてぬいぐるみをとろうとするが、男の子が見事なディフェンスでそれを許さない。でも、手を引っつかんでそんなに振り回したら、クマさん、手もげちゃうよ。可哀想に。
「返してってばぁ!」
「へへっ、やーだよーっだ」
 必死に手を伸ばす女の子とは裏腹に、男の子は少し楽しそう。あれくらい
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