敬愛する遠藤周作先生への手紙 〜神戸旅行記〜 /服部 剛
と本年の始まりを、現実的な時間として感じながら、僕は歩いていました。賑やかな店も並ぶ大船ですが、路地に目を向ければ、ぽつんと独りきりで闇の口を空けて立っている、凹んだビールの空き缶や、酔っ払いに倒された、薄汚れたポリバケツや、新しい店の間に何故か潰れた店跡のまま幽霊のようになった襤褸屋が立っているのを見ると、それらはこの世のあらゆる街に潜む、人々の哀しみのように思えました。
敬愛する遠藤先生・・・この世に生きる人間にとって、一番大切な(なにか)を、言葉にならぬ想いを書き続けた文人のあなたの後ろ姿の面影を、僕はこの生涯をかけて、追い求め続けます。今回の旅先でも、僕は時に憐れで汚れた独りの旅
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