敬愛する遠藤周作先生への手紙 〜神戸旅行記〜 /服部 剛
 
徴としてともるのが見えました。夜空を見上げれば、下弦の月とその下には金星が力強く、昨晩も輝いていました。そして時折何処からか、寺の鐘の音が聞こえて来るのでした。 

 僕は今回の旅の最後に訪れたこの地で、お母様と遠藤先生がかつて過ごしたこの場所に観える、消えることの無い「家庭の灯」を胸に焼きつける思いで、そっと両手を合わせてからその家の前を去りました。 

 仁川駅で帰りの電車に乗る前に、ホームの公衆電話から、東京の順子婦人に電話し、昨晩の年越しの瞬間を、お母様と遠藤先生が共に祈った夙川教会で祈りながら過ごしたこと、順子様の日々の幸福と恵みを願ったことを伝えると「あらまぁ・・・!亡くなった
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