心の難解さへと向かう試み/岡部淳太郎
 
るような雰囲気が蔓延してしまって、それぞれの書き手が自分の詩を振り返る暇さえ与えられていないように思えてならないのだ。
 人の心は複雑であり、自分自身でさえも自分の心がわからなくなることもしばしばだ。心というのは目に見えないだけに厄介な代物で、そんなものを持たされてしまったのが人という生き物の最大の不幸であるのかもしれない。心は難解であり、それは詩の難解さとは比べ物にならないほどだ。心の難しさに比べれば、「難解な詩」など取るに足らないだろう。それほどに心は難しく謎めいている。詩が人に訴える力を持ちうるとすれば、言葉の新奇さや技術の高さといったものではなく、その中にいかに真剣な思いが綴られているか
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