書くこと、まどろむこと、決めること/渡邉建志
な曖昧模糊とした美しい世界がたち現れてきたのではないだろうか。
武満が「リタニ」を「思い出しながら」書き直したとき、でもその和音は本当の初期の作品(「二つのレント」)よりは、
ずっと夢のような響きを持っていて、やっぱりそれは後期の彼にしかかけないものだっただろうし、最初からそのような夢を見ていては、
作曲家としての人生を前に進めなかったのではないのだろうか。
スクリャービンに、ショパンの書法の下でショパン的情熱に身を燃やしていたころがなければ、この世のものではない中期の曲たち、
ソナタ4番の1楽章や、詩曲op.32-1や、クアートル・モルソーop56-3や、プレリュードop31-1、op
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