書くこと、まどろむこと、決めること/渡邉建志
 
っと、母が夢を見ている間に生まれたのではないかしら、と思う。
後期ルドンや中期スクリャービンや後期武満を愛してしまうわたしは、そのことがなにか大きな過ちかもしれない、と思う。
ルドンは、最初からあの夢の世界を描けたのではないし、画業の最初にあの(1900年以降の)作品たちは現れ得なかっただろうと思う。
画業を始めるためには、夢のような曖昧なものではなく、もっと彼を駆り立てるテーマが彼には必要で、
それがあの不必要に思われるほど長いタイトルをもった黒い作品たちだったのだろう。
その衝動的熱情が醒め、でも描きためたことによって得た技術や経験をどこへ向けようと思ったときに、
この夢のような曖
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