白光事象/荷花
いたのであるから、ここにまことでなくとも追うてつけたと信じることも叶おうほどに、彼の姿を眼にする今、泣かずにしていつ泣く。
泣いてまなこ腫らして睡りにつけば、起き抜けにはすべて忘れらるるやも知れぬものを。
ほろほろ夏の午后に溶けていくソォダの泡沫(あぶく)。なみだこぼして、それが仄明るい水面かどこかへうかびあがりゆくのを沈みゆき、見送りゆく。どこまでもどこまでもどこまでも、ゆうらり沈みゆくこと、失われしものへと殉じる終わりへの道行に似た。
――真白な、事象。そのゆえに、かれをあいした、は、
その日から、夏蝶(あげは)飛ぶ夏の午后、ましろい地平のましろい向日葵のあいだから、かれがゆう
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