白光事象/荷花
もののよう、向かい合わせの仕草をひとつに結ぶ。二度とは会えぬと思って、覚悟していた。細く血の流れ続けるような生涯治らぬ傷を負うたと信じたから、今もこのまなこ捕らう彼がまことのものかも分からぬ。
まことであるものか。まことなどであるものか。
失われた者は既に戻らぬ、往きて帰らぬ道を逝ったのだ。だから人は遺されて生きて往く、戻るやもと思えば思わぬものよりも、手酷く傷つき二度とは歩けぬのだろうに。
伽藍など消えた、暗がりよ仄暗がりの夏よ最早二度と目覚めるな。ましろ、ひいろの彼と手を取り、なみだがでた。戻らぬと追ふても追いつけぬと知りおればこそ、なみだも出ずにドライアイス詰めた柩をただ見ていた
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