少年詩人と老いた戸棚の対話 〜ランボー詩集読書記〜 /服部 剛
で僕は感じている。
今日僕が仕事帰りに読んで「いいな・・・」と思った
ランボーの詩はそれら代表作とは異なる地味な佳作「戸
棚」という詩である。十六歳で書いたというこの詩は、
家の中の古い棚に老人のような雰囲気と存在感を感じ、
扉を開くと古着や祖母の肩掛け、飾りメダル、肖像画や
押し花まで・・・様々な想い出の品々を中から取り出す
好奇心のある少年ランボーの姿が浮かぶ。
その古い棚が扉を開いた姿が家族の思いでを語るよう
に口を開く姿とイメージが重なり、「想い出を詰め込ん
だ不思議な箱」のような描写がとても印象的である。
詩の節々で、古い棚の中から古葡萄酒のような薫
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