リヨンの月/aidanico
タルジックと言える彼の愛称も伊達ではないと思わせるほどでした。ホシは、先程までの石のような態度とは打って変わり、売り場の店員を絶句させるような専門的な言葉を水の流れるような流暢な口調で並べて見せました。おいホシ、お店の人をあまり困らせるもんじゃあないよ、とツキが見兼ねていうと、だってツキ、この人これの三代前の型番も言えやしない、明らかな勉強不足だ、この機種がこの薄さになる為に製作者のどれだけの苦心があったか彼はもっとよく知っておかなくちゃあいけない、と半ば興奮気味にまくし立てるのでした。ツキは「ラッピングは続けておいてくれ、直ぐ戻るから」と言って弱り果てた店員に愛想笑いをし(歯並びがとっても良くて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)