祖母の見舞い /服部 剛
 

  らんぷの灯りの下机に向かい 
  ペンを手にした彼は 
  見知らぬ読者に向けて 
  一通の手紙を書いています 
  
               」 


孫の朗読を聞く祖母は  
息絶え絶えに細い手をさしのべ 
もう一度手を握る 


読みながら震える、声・・・ 

頬を伝ういくつもの、涙・・・ 


両手で握った祖母の細い右手から 
すうっと宙に なにか が消えた   

酸素の管の入った鼻から 
寝息は繰り返され 
安らかな呼吸で 
祖母は眠った       

数年前夢に現れたという 
後光の射した父親のまなざしに 
見守
[次のページ]
戻る   Point(5)