祖母の見舞い /
服部 剛
らんぷの灯りの下机に向かい
ペンを手にした彼は
見知らぬ読者に向けて
一通の手紙を書いています
」
孫の朗読を聞く祖母は
息絶え絶えに細い手をさしのべ
もう一度手を握る
読みながら震える、声・・・
頬を伝ういくつもの、涙・・・
両手で握った祖母の細い右手から
すうっと宙に なにか が消えた
酸素の管の入った鼻から
寝息は繰り返され
安らかな呼吸で
祖母は眠った
数年前夢に現れたという
後光の射した父親のまなざしに
見守
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