スーパーにて/吉田ぐんじょう
在庫一掃!
と書かれた透明なプラスティックケースの中に
夏に売れ残ったカブトムシが
山ほど詰め込まれて売られていた
しなびたようなきうりを与えられて
のろのろと動いている
しばらく立ち止まって見ていた
わたしが
カブトムシについて知っていることと云えば
あまり霧吹きで
湿らせすぎると死んでしまうこと
晩秋には冬眠の準備のために
あまり餌を食べなくなることくらいだ
あんまりじっと見ていたせいか
店員さんがやってきて
ひとつどうですかこんなに元気ですよ
と言いながら一匹取り出してわたしに持たせた
ちっとも元気ではなかった
とても軽くて全然動かなかった
死んでいる
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