スーパーにて/吉田ぐんじょう
 

空が晴れていると
どこへ行ってもいいような気がして
ふらふらと遠出をしてしまいたくなる
そんな時はスーパーへ行って
掌にちょうどおさまるくらいの大きさの
果物をふたつ買って帰る
右と左にそれぞれ持つと
ちょうどいいおもりになるのだ
どんな果物でもよいのだけど
できればなるべく鮮やかな色がいい
ぴかぴか光っているともっといい
先頃まではよく檸檬を買っていたのだけど
今時分しっくりくるのは蜜柑である
鮮やかな橙を掌に閉じ込めて
大きく両手を振ると
ここで生きていてもよいような
そんなにおいがして
なんとなく嬉しい
遠くで雪の降っている気配がする



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