( 無題 ) /服部 剛
君がアルバイトで
会えなかった日
自分勝手な寂しさに
俯きそうになった僕は
こころに
一つの山を
思い描いた
雲に覆われ雨降る夜も
雲が流れて日の射す朝も
山は一つの山であり
僕は一人の僕であり
君がアルバイトで
会えなかった日
午前は入院中の祖母を
見舞いに行き
海の見える病室からトイレまで
皺くちゃの手を取って二人三脚
午後は部屋のカーテンを閉め切って
小さい映画館になった我家で
ウイスキーを入れたおちょこを手にほろ酔いで
モノクロの場面にしんみりと映画鑑賞
そのうちすっかり夜も更け
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