( 無題 ) /服部 剛
 
更けて 
近所の買い物から帰った初老の母は台所で 
豚の角煮をぐずぐず煮込む 

君と会えないまま過ごした 
今日という日の楽しみは 
密かな念力で 
棚からぼた餅が落ちる時まで 
こころをじっと山にして 
もうちょっと待ってみようかな 

バイトで疲れて帰る
夜道の君が手にする携帯の 
画面が ぱっ と明るくなるような 
( おつかれさん )の言葉を添えて 
今夜も僕はメールの「送信」ボタンを 
親指で押す 




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