詩のふもとへ問いを発する前夜に/白井明大
 
「いまにはじまったことではない、詩はずっとこの問題を見据えてきたのだ」という答えかたはあるでしょうか。

 ふしぎに思うのは、「9.11」以後などと称してあれほど詩人が動揺していたあの時期にくらべて、いまが静かだということです。本当にふしぎです。あのときよりも、いまのほうがまだ、転換点として重要だと思えるくらいです。そうではないのでしょうか(けっして同時多発テロの事件を軽んじるのではありません。アメリカの影響力が大きい時代にあって起こったできごととしてみたとき、そのアメリカの影響力が変動している度合いとして、今回が決定的であるように思えるということです)。

 いま、詩が根ざそうという、そ
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