ジェラルミン・キス/錯春
っきりおとなしくなって
ぶっちゃけ ね
怒るのも疲れるんだ
ああ
ぶっちゃけ、る、なんて言葉は大仰過ぎるな
もう若くないんだよ
つまりはねそゆことなのよ
(不意にジェラルミンの手触りが蘇る。よりにもよって寒い季節に限って。唇が覚えてる。あのとき)
あのとき俺はいったい何にキスしたんだろう
つめたいシーツの隙間に挟まるのが好きで
でもさ 冷たい人間の皮膚って なんでこんなに寂しいのかって
ずっと目をそらしてきたのに両手でこすってもいくらこすっても
温まらない指先を、映画の猿真似で、ひとつのポケットに突っ込んで
いっちょまえに 切なくなっちゃって
でも俺はオシャレな
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