昨日は孤独な世界?/錯春
 
のうなじを眺めながら、深呼吸する。

(友情とセックスと軽薄さ。コイツは私が人間に求めるもの全部持ってる稀有な奴だけど、いつ憎み出すんだろう。それとも、憎む前には愛さなくちゃいけないのかな。でも、アタシにはどっちがどっちなんだか、よくわかんないや)

「あ、猫」
「いたの?」
「今、声がした」
「そう」
「ここ、猫多いのかよ」
「しんない」

彼女の頭の中で、行き場をなくした誰かの親切心が、どこかへ着陸する。
猫餌を掃除すること。
女友達の彼氏(元)とセックスをしていること。
変質を恐れるのなら、眼をそらすことも必要だろう。
だが、彼女は自らそれを見定めようとしている
[次のページ]
戻る   Point(0)