過日の怪物/猫のひたい撫でるたま子
 
れがあまりに遅かったとしても過去に生きていなければ良いということにする。どんなに早くても未来は追いこせない、だから追いかけたくなる。

収集のつかない事柄がある。事実を確かめたところで、誰かにそれを打ち明けたところで、答えにはたどり着かない。本当には知ることができない本当のこと、私が決めるひとつの答えだけが本当のこと。いずれ間違った答えだと気が付いたとしても、答えを出せれば次の設問がやってくる。

人の心は入り組んだ迷路のようだ、上を見ればまっしろで、下を見れば真っ暗闇で、ガラスで出来たついたての奥に出口が見えたとしても、まっすぐに進むことはできない。諦めて引き返そうとしたところで、歩
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