過日の怪物/猫のひたい撫でるたま子
疲れたときには本を読む。
出発前に友人から借りた小説をゆっくり読んでいる。本は与えてくれるだけだから優しい。言葉を与えてくれるものはそれがどんなものであれ優しい。
それでも、私を可哀想と形容する人たちはみんな愛想をつかしていなくなってしまう。私を植物のようにしか考えていないからだ、考えなくていいというレッテルを貼るからだ、人間扱いしない人に対して、私も人間扱いはしない。
会ったこともない作家の、これから会うこともないだろう作家の独り言は、人の失敗や過去を彩ってくれる。
過ぎてゆく時間に、時計の時間通りに追いつくために生きるのではなく、自分の時間の進み方をして、それが
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