夜のナイフ、君はとても美しい。/ブライアン
 
きた。回転数が上がるメーターを見つめ、彼は思うだろう。今日ばかりは、アコードワゴンのほうがよっぽどいい、と。
 あの冬、大学や就職で県外へ出て行く者を皆で駅まで見送っていた。見送りの車内ではいつも、ゆずの「サヨナラバス」と安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」が繰り返しかけられていた。まるでほかの曲を忘れてしまったかのように。車内のステレオのボリュームを上げる。後部座席から身を乗り出す。前を走る車はなかった。限りなく大声で歌った。駅に着く。新幹線はもうすぐやってくる。ホームへ出る。駅のホームでも、歌った。永遠に別れるわけではない、と。けれど、感じていた。もはや過ぎた時間なのだ、と。愛の告白
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