夜のナイフ/ブライアン
ことなど誰もしなかったのかもしれない。彼は何度もそう繰り返していた。彼のための夜は終わったのだった。雪はいまだ降り続けていた。夜はもはや無言ではなった。夜は喧騒に満ちている。笑う声、愛の告白、叫び声。彼女の携帯が鳴った。あ、来た、と言って彼女は友達を迎えに立つ。愛の告白をした友人は、手持ち無沙汰になる。目の前のビールを手にした。さむぐね、と彼は言った。なあ、と答えた。彼女は友人を連れてきた。二人は適当な場所に座った。彼女の友人の前に、愛の告白を終えた友人は座った。さっきのナイフを手に持っている。なあ、俺、お前のためなら死ねっから、と彼は言った。部屋の窓は開いていた。空に散りばめられたエーテルは、笑
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