「宏美の心配」/菊尾
伸縮はゆっくりと行われるのだからそれなりの時間経過はあったのだろうけど、その時の私は彼女に釘付けでそんな時間経過など気にならなかった。
あれは一瞬の出来事のように思えたが、今となっては「向かいの席の男の子、さっきからこっち見てるよね。」なんていうノリで彼女に伸縮が始まっていることを耳打ちできるのだから随分と私も彼女の特異体質に慣れたものだなぁとしみじみ思う今日この頃。如何お過ごしかしら皆さん。
ハッ!いけないいけない。またちょっと自分の世界に耽っていた。ここでちゃんとしないと誰が依子を食い止めるのよ。しっかりして宏美!
回想に耽っていた私は再び依子に視線を戻すと幾分落ち着いたようだった。
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