爆裂(上、後)/鈴木
 
いるだろ? がんばれよ。
 振り向いた勝也の視線は階段を上がる班員たちへ向けられていたが、
 ――遅刻しちゃうぜ。
 祥平には彼がそのうちの一人しか見ていないという確信があった。白い皮膚に汗が玉と光る彼女はおさげ髪の副班長にくっついて始終目を伏せたまま歩く。学校で見る誰よりも美しかった。茜だ。華奢な肩に乗った妖精が長い爪で威嚇してきた。行くぞ、と小突いてくる班長のにやけ顔が、より恨めしくなる。自分では誘えないくせ露骨に命ずるのも嫌だから回りくどい策を弄するのだ。一石二鳥のつもりか。祥平は絶対に茜を連れて行くまいと決意した。この顛末を同日の午後四時半に「社ヶ丘パークマンション」C棟・四○一号の
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