爆裂(上、前)/鈴木
るのかひねもす考えたものだ。そしてすべて消え去ってしまう――幻みたいに。
幼少時、彼は幻を見る子だった。路傍の石を妖精と信じ自室の床を川原のごとき有様にしたり小児科の壁に認めた染みから穀類王国の物語を構築し悦に入り帰宅したくないと泣きじゃくったりなどはざらで、図鑑で得た知識を合成した幻の昆虫へ向かってジャングルジムの上から跳躍し一時間後に腕を吊りつつ「痛み」に話しかけていたこともある。親の心配は尋常でなかったろうと、考えるたびに苦笑する。
突き当たりのT字路を右に折れればなだらかな頂にマンションが列を為しており、左列の手前から二番目にある三階建て「ハイム高塚台」の一○五号が、小学二年生から
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